乳化とは(Emulsion)

料理のコツ

この記事はとても長いです。ざっくり言うと

・乳化とは油と水分が混ざること

・乳化の方法は乳化剤と撹拌

・かき混ぜる最初はゆっくりと

・乳化は時間が経つと再び分離する

乳化(にゅうか)を考える

パスタソースやお菓子を作るときによく耳にする乳化(Emulsion:エマルション)という言葉。簡単に説明するなら、水分と油が混ざり合いトロミがつくことです。

水分と油は分子構造の違いからお互いに分子の中に溶け合うことはありません。しかしある条件下で二つの分子を混ぜ合わせていると、乳白色にトロっとした液体に変わっていきます。

この化学反応こそが乳化で、料理において「乳化する」とは、溶け合うことのない水分と油が混ぜ合わり(溶けたわけではない)、1つの乳化液(ソース)になったような状態をいいます。

ソースづくりにおいて乳化する(トロミがつく)ことはとても大切で、もし水分と油がお互いにそっぽを向いてしまうと、ただ水っぽく、そして油っぽく、さらにメイン食材(パスタなど)に絡まない、といった残念な結果になるでしょう。

乳化液はトロミとコクを引き出すだけではなく、油っぽさを軽減させます。料理の専門家たちが使う「テクスチャー」という言葉。口の中に入れた時の、舌触りや歯触りなど、「触感」がまさに楽しめるのです。

乳化テクニックでよく聞く料理はペペロンチーノでしょうか?にんにくと油と唐辛子、それに塩を加えるだけでも完成する料理なだけに、乳化が失敗するとコクがなかったり油まみれだったり、ただ塩っぽかったりします。

(*ただしペペロンチーノのレシピは乳化の方法ばかりが取り上げられますが、乳化が成功しても美味しいペペロンチーノを作るのは難しいものです。それについてはペペロンチーノの作り方で説明しています

 

*写真はペペロンチーノのソース作り。オリーブオイル大さじ2でニンニクを炒めたものに、パスタの茹で汁を大さじ2を加えたもの。黄色がオリーブオイル、左側の透明な膜が茹で汁。茹で汁を加えた瞬間は混ざり合うことなく、完全に分離している。

 

 

フライパンを優しく揺するとだんだんと馴染んでくる。

 

 

 

 

さらに菜箸で軽くかき混ぜると透明な膜が分散して、オリーブオイルに茹で汁が溶け込んだように見える。

(*実際には逆で、茹で汁にオリーブオイルが分散されている)

 

 

さらに今度は激しくかき混ぜると中心部分は濃い黄色になり、周りの部分が薄い黄色になる。

(*実際には、中心部分は白濁色になりトロミが付き始めている。乳化が始まっている)

 

 

ほぼ乳化した状態。色が落ち着き周りの部分もソースと一体化。

オリーブ油と茹で汁の比率は1:1で写真のような仕上がりになる。このあとパスタと絡めたときにさらにトロミが付くので、これ以上の強いトロミを求める必要はない。

 

乳化は油と水分(素材の中の水分も含む)を使うものならどんな調理でも起こります。チャーハン、こってりラーメン、サラダのドレッシング、など比率的に油を多く使う調理で起こりやすく、「油がソースやスープの役目となって具材と絡まる」ときに乳化のテクニックが美味しさを左右します。

プロが作る美味しいチャーハンは油がたっぷり使われることが多いですが、それなのにあまり油っぽさを感じません。それは油を一粒一粒のお米とコーティングさせることで、「ご飯から出る水分と油が乳化している」と考えられます。

こってりラーメンも同様。油と水分が乳化することでトロっと滑らかなスープになり、それがよく麺と絡みます。この乳化状態のラーメンは、「見た目よりも油っぽくない」と感じる人が多いはずです。

乳化の方法

油と水の割合

乳化は、油が水分に入り込む水中油滴型(O/W)と、その逆で水分が油に入り込む油中水滴型(W/O)の両方で起こります。

ですが、具材を絡めるソースのほとんどが水中油滴型と思ってよいでしょう。つまり水分の中に油が分散された状態、大きな水たまりの中に「油が点々としている」状態です。

(*乳化は、水と油のお互いが分裂して混ざり合うのではなく、一方が分散することで他方に包み込まれます。バターやビネガードレッシングなど油中水滴型では、油の中に水分が細かく分散していますがここでは割愛します)

油と水の割合は、分散する液体(つまり油)が多いほどトロミが強くなります。後で説明する「乳化剤」にもよりますが、水と油のバランスが「油1:水分1」から「油3:水分1」あたりがもっとも濃厚な乳化液になるでしょう。(油が水の3倍体積以上になるとだんだんと乳化しなくなる)

*パスタソースで乳化させる場合は油を入れすぎずに、「油1:水分1」もしくは「油1:水分2」あたりが最適です。

撹拌とタイミング

うまい乳化液の作り方は、最初は優しくかき混ぜてやることです。可能なら分散相となる油を少しずつ水分に加えていき、その都度かき混ぜる。こうすることでキメの細かい乳化液が完成します。

ケーキ作りをしてる人ならご存知だと思いますが、「生地に油を少しづつ加えて滑らかになるまでかき混ぜる」。まさにあの作業のことです。

最初に少量の油でキメの細かい乳化液を作ってしまえば、あとは残りの油を加えてだんだんと強くかき混ぜていきます。

ひとたび乳化液が完成したら(これ重要です)。乳化液のトロミを強くするか弱くするかはここで調整します。ポイントは、完成した乳化液をさらに強くかき混ぜればトロミが強くなるのではなく、分散相(油)の体積を多くすれば、よりトロミが付きます。つまり油をさらに加えて撹拌すれば、より粘土の強い乳化液が完成します。(乳化してないのに油を加えたら失敗しますよ)

*撹拌(かくはん)とはかき混ぜること。「乳化させたいなら激しく混ぜ合わせる」というのは理にかなっています。油と水分が分離したドレッシングの瓶をよく振ったり、ボール内の油と水分を泡だて器やミキサーで激しく撹拌すると乳化が起こります。(ただし、強く激しく撹拌するとキメが粗く分離しやすく、すでに乳化したものを激しく撹拌してもトロミは強くなりません)

油に水分を加える場合

パスタソースなどで、ニンニクなどを炒めた油にパスタの茹で汁を加える場合は、水分を加えるのであって油を少量ずつ加えることができません。

そのときにも、茹で汁を入れたら最初はゆっくりかき混ぜる。イメージは、油は水に浮くので、油を茹で汁の中に潜り込ませる感じ。(イメージを理解するだけでも違います)

詳しくはペペロンチーノの作り方で説明しています。

乳化剤、安定剤

油と水の乳化を助けるのが乳化剤です。

タンパク質やでん粉がそれのことで、撹拌する前にタンパク質やでん粉を入れると乳化が起こりやすくなります。*乳化剤がまったくないと乳化は難しいと考えていいでしょう。

パスタのゆで汁にはパスタからでん粉が溶け出しています。ペペロンチーノなどで、パスタのゆで汁を使う理由は「でん粉」が必要になるからなのです。

乳化剤は、でん粉よりもタンパク質、さらには乳製品(すでに乳化済み)のほうが役立ちます。

現実的に使われるのは、パスタの茹で汁(もっとも不安定)、魚介、豚肉や牛肉、卵黄、バター、チーズ、生クリーム、ゼラチン(もともと粘性がある)などが一般的でしょう。

乳化がうまくいかないときは、バターやチーズを少量加えるとうまくいく場合があります。

乳化の温度

乳化ソースは熱いより温かいくらいの温度を保つようにします。

低すぎても高すぎても乳化は失敗する可能性があり、油は温度が低すぎると固まりやすく、水は温度が高すぎると蒸発します。

ソースが蒸発するほどでなくても、温度が高いと活性化した分散相(油)がくっ付き合ってしまう(つまりソースが分離してしまう)失敗があります。

フライパンなどで乳化させる場合は、火を止めるか、少なくとも中火以上でグツグツ煮るようなことはやらないほうがいいでしょう。もし乳化したとしてもキメが細かくはならないはずです。

乳化に最適な温度はないとされていますが、撹拌するときに2つの液体(油と水分)に温度差があると、1つの液体になるには時間がかかります。

乳化の弱点(分離)

乳化液の最大の弱点は油と水分の分離です。

瓶に詰めたドレッシングと同じように、時間が経てば再び分離が始まります。下に水分、上に油という2層に分離してしまうのです。

この対策としては早く食べてしまうのが1番です。作り手側で工夫するとしたらバターやチーズなど安定剤として強めのものを入れることです。勘違いされやすいですが、料理にバターを少量入れるのは風味やコクを求めるより安定剤として使用する場合もあるのです。

ソースだけならば再乳化させることも可能です。乳化剤がしっかりとソースに残っていれば、再度かき混ぜれば乳化するはずです。その時にソースを温めると、多少なりとも水分が飛ぶので油の体積が多くなりトロミが強くなるかもしれません。それが嫌なら水を加えればいいでしょう。

 

ペペロンチーノで言えば・・

料理の完成時はとても美味しくても、おしゃべりでもして時間が経つと美味しさは半減していきます。このとき乳化の安定剤として入れたパスタのゆで汁はとても頼りなく、バターなど強い乳化剤ほど長持ちします。

こってりラーメンでは・・

もともと分散相(油)が多いので、時間が経ち分離することでスープの表面が固まります。そして油の下には塩っぽいスープだけが残ることになります。これを知っているので、店主は「早く食べて!」と怒る人もいるほどです。こってりラーメンはなるべく早く食べる、これが1番いい食べ方です。

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